平成30年度防災研究所特定研究集会30C-02
ダム洪水操作はどこまで高度化できるか?
-ダム再生ビジョンを実現させるための気象予測の活用とダム洪水操作実務への展開-
“Advanced dam reservoir operation for flood management considering real-time meteorological prediction”
場所 京都大学防災研究所 連携研究棟3F大セミナー室
セミナーに多数のご参加をいただきありがとうございました。 セミナー報告
目的
平成27年の関東・東北豪雨や平成29年の九州北部豪雨、平成30年7月の西日本での豪雨災害など、水害が頻発している。気候変動の影響により水害の激甚化も懸念される中、既設ダム貯水池による洪水調節操作の高度化が求められている。本研究集会では、当該分野の研究者と実務者が一同に集まり、近年、進展が著しい気象予測技術の効果的な活用によるダム洪水操作の高度化の可能性について議論するとともに、当該技術の実務への実装方策や課題を明らかにする。
概要
水災害の頻発化や激甚化が懸念される中、既設ダムの有効活用によりこうした水災害への対応能力を向上させる「ダム再生ビジョン」が平成29年6月に国土交通省により策定されるなど、既設ダムの洪水操作の更なる高度化が求められている。特に、観測技術の進展や計算機資源の向上に伴い、近年、飛躍的な技術の進展が見られる気象予測を活用することによって、予測される出水の状況に応じた適応的でかつ効果的なダム洪水操作の実現が期待されている。
これらは、1) 事前放流操作(大規模洪水を予測してダム水位を予め低下し洪水調節容量を増加)、2) 異常洪水時防災操作(大規模洪水流入に合わせて洪水調節操作から(流入=放流)操作に移行(=ただし書き操作))、3) 特別防災操作(下流域の状況(氾濫発生など)とダムの余力に応じて洪水調節率を増強し下流の災害拡大を防止)などに集約される。しかし、気象予測の利用によって実際にダム洪水操作をどこまで高度化できるのか、そのためには具体的に気象予測をどのように利用することが効果的なのかといった点については、十分に解明されていないのが現状である。
本研究集会では、これら既存ダム貯水池を最大限に活用するための洪水調節のあり方について、レーダ雨量情報やアンサンブル気象予測などの最新の気象予測の効果的な利用方法と期待される効果を明らかにする。その上で、気象予測利用のダム洪水操作手法の実務への展開へ向けた学術的および実務的課題を明らかにすることで、これらの課題克服へ向けた方向性を研究者と実務者の間で共有するとともに、当該分野における産・官・学のネットワークを強化する。